■腐食液は塩化第二鉄を使用。
■有害物質を含む溶剤(ベンジン、リグロイン、灯油、ホワイトガソリンなど)は使用しません。
現在、当スタジオでは、アクリルベースのグランドや天然オレンジオイルの溶剤・De-Solv-itの使用により、ベンジン、リグロイン等の石油系溶剤は使用しません。
■印刷後の銅版は、サラダ油や天然オレンジオイルの溶剤・De-Solv-itでインクを拭き取りその後、食器用洗剤(石鹸)で水洗。
■インクのついたローラー、ゴムべら、インク練り台などの掃除には植物油(サラダ油やオリーブ油など)を使用。その後、炭酸カルシウムの粉をまぶすようにしてウエスで拭き油分を取り除く。または、エタノールで拭く。または、食器用洗剤(石鹸)で水洗。手についたインクもサラダ油で拭くとある程度取れます。その後石鹸などで水洗。
■金属磨きで銅版を磨いた後の汚れは、天然オレンジオイルの溶剤・De-Solv-itで拭き取りその後、食器用洗剤(石鹸)で水洗。
■金属磨きは、光陽社の銅・真鍮用コンパウンドがおすすめ。嫌な臭いがなくほぼ無臭です。
- Non Toxic Printmaking - への移行 [海外の研究]
■ 毒性の凹版画制作とその伝統 ■
*この文章はキースハワード氏の著述 KEITH HOWARD'S NON-TOXIC PRINTMAKING PAGE(1996年~1997年)から抜粋し翻訳しました。訳・土居誠
版画芸術は歴史的に数世紀に溯って、芸術教育に一般的に受けいられて広く実施されて来た状況があります。労働衛生、安全、及び環境についての概念が考えられる何百年も前にほとんどの伝統的な版画制作技術が見い出されました。その結果、生態の保護、健康、及び安全に関係する問題と伝統的な版画制作の習慣とは全く相容れないものでした。危険な薬品と溶剤が版画制作に使用されている状態で、主に労働衛生と法律上の安全基準に照らし合わせて、教育機関はすべての美術学生と教職員にその方法の再評価を促しました。
1978年に刊行された「版画制作における健康と安全:版画家のためのマニュアル」("Health and Safety in Printmaking: A Manual for Printmakers", published in Canada by the Alberta Labour, Occupational Health and Safety Division in Edmonton)によれば、伝統的な版画制作の従事者が扱うメディアには一般的に112種類の毒性と有害な物質があります。これらの有害な化学物質と溶剤のいくつかは以下の通りです。硝酸、塩酸、硫酸、フッ化水素酸、クロム酸、トルエン、ベンゼン、テレピン油、ラッカーシンナー、メチル、セロソルブアセテート、キシレン、および芳香族炭化水素溶剤。それらの多くが発癌物質であるこれらの化学物質への暴露からの、職業的な知られている副作用のいくつかがあります。流産、中枢神経系障害、塵肺、喘息、肺気腫、壊疽性やけど、また、神経麻痺、皮膚発疹、皮膚炎、及び粘液膜と気道へのダメージ及び肺、肝臓、腎臓、心臓に影響する組織的な中毒。ほとんどの伝統的な版画制作スタジオが、健康被害に関連したこれらの製品の多くを同時に使用するので、これらの結合した毒性(有害性)はさらに未知数です。結局、私たちがすべての人に尋ねるべき一つの質問があります。過去の毒性を持つ伝統は正に滅ぶべきものに値しませんか?
□私たちは伝統的な版画制作から有毒化学物質と酸にどう対処したか
責任のある研究(教育)施設は、排気装置により教室や美術工房から危険な空気中の化学物質を排気させることによって、液体と空気中の毒素の問題に対処しました。無責任な研究(教育)施設は、伝統的な版画制作メディアに関連して、伝統が要求したように盲目的に潜在的に悲惨な生態的、そして、職業的な健康と安全を引き続き無視しました。毒物学的な結果に対処するための最終的な一般的手段は美術カリキュラムから版画制作を根絶することでした。毎月、私は労働衛生と安全に関連するなかで版画制作授業の廃止について聞きます。これらのことにも関わらず、幾人かの版画家は隠れるように日々危険な方法で仕事をして、自分自身の健康、および彼らの学生の健康を危険にさらしています。
わずかな研究(教育)施設しか、法律の安全基準に従って教室や美術工房に何千ドルもの費用のかかる高価な排気システムを持つ余裕がありません。政府の指導基準に従って、この法外な出費で、教室は取り扱う有害化学物質にはより安全になります。しかし、内部(室内)の空気や液体の毒素は直接、外部環境にどっさり排出されます。たいていの場合すべての有害で毒性の汚染物質が、水道や地域の埋立区域にどっさり排出されるか、または少しも濾過なしで直接自然環境に排出されます。避けられない事実として、環境への影響と責任の問題はこれらの健康と安全対策によっては完全に解決されるというわけではありません。
さらに、もし研究(教育)施設が、教室と美術工房を毒性のある伝統的な版画技法を教えるために、より安全にするための何千ドルを費やすことを選択すれば、これは結局、問題の冗長を引き起こすかもしれません。これらの非常に制御された条件のもとでの伝統的な毒性のある版画制作技術で導かれた学生が学校の施設外で安全にこの芸術ジャンルを追求することは出来ません。その上、毒性の版画制作の習慣は私たちの社会を流れている一般的な生態(エコロジー)の認識から逃れることができません。従事者(版画制作に携わる者)の疎外とこれらの毒性の伝統の有用性における衰退は目に見えて明らかです。
ーーーー 一部省略(エッチングの制作行程の簡単な説明)ーーーー
□毒性とエッチャーの芸術の伝統
経験豊富なエッチャーが最初にこの芸術形式をいつ探り始めたかはわかりませんが、費やされた時間の積み重ねに比例して、伝統的なインタリオ(凹版画)メディアには親しみと気楽さが生まれます。しかし、初心者の版画制作の学生が伝統的な版画スタジオで危険にさらされて当惑しているような伝統的な方法は、理解するのは困難です。初心者は毒性の蒸気(有毒性ガス)を防ぐために防護服を絶望的に身に付けた版画家の制作室で歓迎されるかもしれません。または、それらのことにどんな注意も払わない版画家の短命な最後の姿を目撃するかもしれません。これらの潜在的版画家の嗅覚が多くの有毒性ガスによって攻撃される場合、彼らは版画制作スタジオに入るのをためらうべきです。版画制作を追求することを選ぶという決断は、彼らの好奇心をそれらの健康と安全性さらに環境への意識に結びつけることが肝要かもしれません。毒性問題を考えた後にでも、多くの独善的な版画家たちは彼らの伝統的なエッチングを追求するがために、健康に対して少しの価値も見い出さないかもしれません。このことは、版画制作の潜在的成長を妨げて、実に確かに、世界中の芸術教育の機関で、版画制作課程の終焉につながりました。現在、健康や安全性に非常に厳しい法律をもつイギリスなど、いくつかの国では、二つの選択だけを版画制作の教師に求めます。版画制作部門を閉鎖するか、非毒性の方法論へ移行するか、のいずれかです。非毒性の版画制作方法論が例外よりむしろ標準になる前に、啓発過程にあるか、または、健康と安全の法律が制定されるかは、ただ時間の問題であります。
□教師としての版画家達
歴代の版画家たちは、版画制作の錬金術的な伝統の中で主導権を取って来ました。その儀式が何百年もの習慣から受け継がれている状態で。制作において、伝統的なエッチングに使われた有害化学物質のもとで健康と安全の重要性を無頓着に無視する版画家の不幸な伝統があります。
芸術家と学生は、およそ7つの一般的な技法に限って伝統的なエッチングに取り入れました。その結果、従来の版画制作が完全であり、新しい技術的な貢献が不要であり、保証もないとさえ信じている何千人もの版画制作の教師がいます。変化するには大きな勇気を要します。何年間も伝統的な方法でその素晴らしさの追求に費やして来た熟練した版画家たち、彼らは、自らが選んだ芸術形式の専門家ではもはやいられないかもしれないと、受け入れを拒絶するかもしれません。残念ながら、新しい自分たちの現在の方法論を公正に再評価することが出来る前に、彼らは時間とエネルギーをこれらの非毒性の版画制作の代替手段を学ぶことに費やさなければなりません。真の専門家なら、彼らの専門的技術の分野を新しい開発について行くためにそれを自らの仕事にします。他のほとんどのスタッフ(弟子たち)がそれらの専門家たちからこのことを要求します。
一つの方法に満足している伝統主義者には、これらの変化に遅れをとらないように独学するよりむしろ口実をでっち上げ、革新を無視することは容易いことです。驚いたことにいく人かの版画家たちが異なった方法論の単なる提案で敵対的になりさえして、それらの分野での革新を無視するように彼らの学生に命じます。これらの版画家たちは、知識のないことに恐れています。ロバート・F ケネディーが正に簡潔に述べたように、「進歩は素晴らしい言葉です。しかし、変化は動機付けです。そして、変化は敵を作ります。」
素晴らしい皮肉は、彼らがこれらの恐れに打ち勝って、時間をこれらの非毒性の版画制作の代替手段を探るのに費やすことが出来るなら、専門家として、そして、個人としてもより良いことです。非毒性の方法論に切り替わるのを選ぶ版画家が彼らの健康と幸福を増すだけではなく、また、彼らの創造的なイメージを生み出す可能性を増幅させるでしょう。非毒性の方法論に切り替わるのは、より少ない時間と安いコストで技術的に優れたプリントをすることができます。本当に、全く変化させない理由を探すのは難しいです。事実、版画家がいったんこの変化を起こすと、彼らはもう以前の毒性のある方法には決して戻りません。大部分の人は版画制作への再生と高い関心を示します。教育の専門家のためには、それは現代に追いついて、教育への彼らの関心を復興させる理想的な機会を提示します。
□制作のより良い、そして安全な方法がある
私の非毒性版画制作の公言は、私がもはや環境を汚染して、不必要に私の学生とスタッフの健康を危険にさらすことをしないというメッセージです。BETTER AND SAFER WAYS OF WORKING(制作のより良い、安全な方法)は技術的な品質を少しも損ないません。これらの新しい非毒性の版画制作のテクニックは、毒性のあるテクニックより技術的にも、コスト面でも優れています。それらは、版画制作の可能性を100倍にする創造的なイメージを広げました。版画制作は、非毒性の版画制作の代替手段の急増で、ルネッサンスが起こっています。版画制作は、奨励する関係者の好意的な態度 ー 探究、発見、共有、親しみやすさ ー を反映して発展しています。
□生まれ変わるインタリオ(凹版画)
私たちはバイタリティーにあふれた創造的な力で芸術と教育の世界で凹版画の再生を経験しています。版画家は初めて、毒性の伝統的なインタリオの技法に対して実行できる代案を持ちました。私たちは創造的な研究のニューエイジの発端に立っています。版画家になる絶好の時期です! 版画家と美術教育者は、凹版画制作に関わるこの新しい非毒性の多彩な技法と適切な費用を知って、この方法から生まれる興味はつきないでしょう。凹版画の創造的な表現力は大規模に変化をしています。より素晴らしい技術的な自由さと創造的な探究の精神を具体化しているここに概説されたテクニックは、新しい哲学を表します。これらのテクニックはいくつかの初歩的なことと、他の生まれ変わるようなことを説明しています。凹版画に、この新しい、より安全な方法で、彼らの個々の表現の要求に応えるために革新的にこれらのテクニックを採用する版画家はパイオニアです。彼らは芸術家の真の創造的で知的な精神を具体化します。